2017年頃から2020年にかけての浦和レッズのフォーメーションの変遷をまとめてみたいと思う(当記事は2019/7に投稿し、2020/7に追記修正したものです)。
この期間、浦和レッズは何度も監督が変わっている。
2017年のシーズン途中で当時のミシャ監督が解任され、堀監督となった。リーグ戦では振るわなかったものの、その体制でACL優勝を成し遂げ翌年へ期待を持たせた。
しかし2018年シーズン早々に当時の堀監督が解任され、大槻監督が暫定的に指揮をとった。
その後浦和レッズは「実績のある勝てる監督を」ということでオリヴェイラ監督体制をつくった。
Jリーグも上位を狙いつつ、天皇杯も戦い優勝し、2019年のACL出場権を獲得。
ところが2019年シーズンが始まると最初からチームのパフォーマンスが上がらない。勝てなくなり、ついにオリヴェイラ監督が解任され、大槻監督が就任した。
これはわずか2年間の間で起きた出来事。この間、監督交代とともに、戦い方やフォーメーションが徐々に変わっていった。
そして残留争いに苦しんだ2019シーズン終了後、浦和レッズはチームコンセプトを発表し、2020シーズンから大きく戦い方を変えることになる(フォーメーションも3-4-2-1から4-4-2へ)。
過去の試合のフォーメーション とスタメンを紹介しながら振り返ってみたい。
ミシャさん時代(2012〜2017/7)
Jリーグに旋風を巻き起こしたミシャ式サッカー。
3-4-2-1という数字では表しきれない複雑なスタイルで、攻撃時と守備時でポジショニングが変わる特殊なサッカー。広島、浦和、札幌と指揮をとる場所を変えているが、そのスタイルの基本は変わっていない模様。
基本スタイル
3-4-2-1と呼ばれる基本配置。ただし試合中はこの配置で戦う時間は多くない。
試合中の変化
攻撃時は両方のサイドアタッカーが高いポジションをとり、5トップを構成する。
ボランチは1列おりて、両ストッパーを高い位置にあげる。ピッチの至るところに三角形を作り、パス交換をしながら相手の隙を狙う。
守備時は両サイドアタッカーが下がって5バックを構成。だいたい失点するのは被カウンターのときか集中力が切れているときだった。
ミシャ式の詳細は過去の記事をご覧いただければ。
- ミシャ監督による浦和レッズの基本戦術とフォーメンション(2017.2.17)
- ミシャ監督による浦和レッズの戦術とフォーメションその2(2017.7.26)
ちなみにミシャさん全盛期(2016年頃)のスタメンは以下のメンバーが主だった。
外国籍選手はいないが、全員が攻撃&守備に走れるしスキルの高いメンバーで、「勝てない相手はいないぜ」くらいの気持ちで戦っていた頃である。
堀さん時代(2017/7〜2018/4)
ミシャさんから引き継いだときは同じフォーメーション を継承したが、徐々に堀さんのスタイルに変更がされていった。
以下のスタメンは2018シーズンはじめの頃のFC東京戦。
堀さんのスタイルは基本4バックと1アンカー、4人の攻撃的なMFと1トップ。
2シャドーのポジションはなくて、2ウィングのイメージ。サイドアタッカー(ウィング的なポジション)が広く高い位置を取る。
セントラルMFの二人は守備時はボランチの位置まで戻ったり、攻撃時は結構自由の動いたり。攻撃の組み立てで柏木選手が降りてウィングの選手が中央に入っていくようなシーンもよく見かけた。
マルティノス選手が獲得されたのは2017シーズンから2018シーズンにうつるとき。
僕は堀さんのサッカーのサイドアタッカー(ワイドに張るウィング的ポジション)として獲得したのだと理解している。
ミシャさんスタイルの1トップも2シャドーもマルティノス選手の特徴には合わない。また、上下にアップダウンし高い運動量と粘り強い守備が求められるミシャ式サイドアタッカーも向いていない。
堀監督が2018シーズン始めにすぐに解任されてしまったのはマルティノス選手にとっては不幸だったと言える(2020年、4-4-2スタイルに変更されサイドハーフのポジションができてから彼は再び輝くようになる。)。
現実的な戦い方もできる堀監督は守備を堅め、2017年にACLを獲得。途中からいろんなビルドアップの方法をトライしていて、見ている方も楽しかったが、うまく噛み合わずに2018シーズン途中で堀監督は解任されてしまった。
大槻暫定監督時代(2018/4)
堀監督から次の監督へ引き継ぐ間をつなぐため、大槻暫定監督が発足。大槻監督は3バックに戻し、ミシャさんスタイルに近い形をとった。1トップも2トップも試していたが、6試合のなかでは2トップの方が多かったと思う。
以下のスタメンは当時の神戸戦のもの。
どちらかというとミシャさんスタイルを採用し、当時いたメンバーで最大限の力を発揮するという現実路線を選んだ模様。
ただし、堀さんスタイルと合わない駒井選手はすでに移籍しており、関根選手も海外。サイドアタッカーが不足する厳しい状況。
橋岡選手がトップチームの試合に抜擢されたのはこのときだ。
右サイドアタッカーで橋岡選手がスタメンを張るようになり、守備に粘りが出るようになった。
公式戦4勝2分0敗(うちリーグ戦3勝1分)という成績でオリヴェイラ監督にバトンタッチとなった。
オリヴェイラさん時代(2018/4〜2019/5)
オリヴェイラさんがよく使ったのは3-5-2。
以下のスターティングメンバーは2019シーズンのガンバ大阪戦のもの。
4バックを導入するかと思いきや、3バックを継続したオリヴェイラさん。
手持ちの戦力を考慮した戦略だったのだと思う。厳しいイメージだけど、柔軟な考え方もお持ちなのかなぁと思った。
ただし、試合中各選手がポジションを大きく入れ替えることをよしとしない。
セットプレーで得点できなかったり、ファブリシオ選手のような強烈なミドルや決定力を持つ選手がケガで不在となると厳しい戦いを強いられる。
ストッパー(槙野選手や森脇選手)、サイドアタッカーの位置も比較的高くなく、2列目からの飛び出しもあまりなくて、しばしば得点力不足に陥った。
守備は強固さを得たものの、セットプレーで点が取れないとなかなか勝利に結びつかず。
手堅い試合運びで天皇杯優勝まで導いてもらったものの、2019シーズンは勝ち点を積み上げられない状況が続き、解任となってしまった。
大槻監督 2019/6〜
2019シーズンと、2020シーズンでは戦い方もフォーメーションも大きく異なる。それぞれについて記載する。
2019シーズン(6月就任後〜シーズン終了まで)
基本フォーメーションはミシャさんと同様3-4-2-1を継承。以下はACL決勝に臨んだスタメン(vs アルヒラル第2戦)。
しかし戦い方はミシャさんスタイルとは違った。
分析して守備でやりたいことをできるメンバーをスタメンに起用する傾向にあったように思う。守備がはまらないと苦しむとともに、攻撃がうまくつながらず苦しむ試合が多かった。
ミシャさんのようにSBを高く上げることはあまりせず、ビルドアップやゴールにどうやって近づいていくかというところが明確に見えず、攻撃で停滞する場面がよく見られた。
また、柏木選手の不調(怪我がちで不在)も影響したのかセットプレーでの得点も減少。
個々の能力では強みを持つレッズは、ACLでは決勝まで勝ち進めたものの、リーグでは結果が出せないまま残留争いを戦うこととなってしまった。
途中で監督交代してACLもルヴァンも天皇杯も並行して戦うなかで、なかなか難しい状況にあったと思う。
2019シーズン終了後に掲げられたチームコンセプト
2020シーズンのフォーメーションを語る前に、2019シーズン後にクラブが掲げた浦和レッズの目指す姿に触れなければならない。
2019年のシーズン終了後、浦和レッズはチームコンセプトを発表した。
今までは監督次第でサッカーが大幅に変わるチームだった。しかし継続性がなく、選手をすぐに入れ替えできるわけでもなく、優勝できたシーズンもあれば残留を争うシーズンもあった。
そこで、クラブとして徹底的に浦和レッズが目指すべきサッカーを考え抜きそれをベースにチーム作りをしていくこととした。
詳細はこちらの記事を参考にしていただきたいが、チームコンセプトは以下の通り。
- 『個の能力を最大限に発揮する』
- 姿勢として『前向き、積極的、情熱的なプレーをすること』
- 『攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをすること』
そして、具体的なイメージとして、”守備は最終ラインを高く設定し、前線から最終ラインまでをコンパクトに保ち、ボールの位置、味方の距離を設定し、奪う、攻撃、ボールをできるだけスピーディーに展開する…”といった説明があった。
攻撃はとにかくスピード、奪ったら短時間でフィニッシュまで持っていく、そんなサッカーを目指すことに。これがサポーターを、スタジアムを熱狂させ共に戦える空間を作るため、と。
2019年J1リーグで残留争いに苦しんだ大槻監督は、2020もこのコンセプトの実現を担う監督のポジションで続投することが決定された。
2020シーズン
明確になった浦和レッズが目指すサッカー。
これを受けて、大槻監督は戦術を変更。フォーメーションも4-4-2となった(現有戦力を活かすための4-4-2なのか、選手が入れ替わったら違うフォーメーションになるのかは不明)。
同一レーンをまたがない、と言った基本ルールも定めたり、カウンター時の立ち位置などの決まりごとはある模様。
何よりも、奪ったらすぐ相手ゴールに向かっていく、という狙いが明確に現れていて、開幕後すぐ、狙い通りのゴールを奪うことができていた。以下ハイライト動画(ルヴァン杯初戦)の3点目で見せたゴールがまさにそれ(1:55くらいから)。
🎦 ハイライト動画
— Jリーグ (@J_League) February 17, 2020
🏆 JリーグYBCルヴァンカップ グループステージ 第1節
🆚 浦和vs仙台
🔢 5-2#ルヴァンカップ#Jリーグ
その他の動画はこちら👇 https://t.co/CfyiYDvsJ6 pic.twitter.com/YYiWW2eKnQ
シーズン通して速い攻撃からの得点を積み上げることができるのか、ここが注目のポイントと思う。
ちなみにJリーグ開幕すぐの湘南戦フォーメーションとスタメンは以下の通り。
カウンター攻撃時のキーパーソンとなる汰木選手(攻守への貢献、ドリブル突破が魅力)、山中選手(必殺左足からのクロス・シュート)の左サイドは大きな武器となっている。
新規加入のデン選手は、高い守備ラインを敷くために必要なスピードやマメなポジションチェンジ、そして強さも持ち合わせた実力者。シーズン序盤のCBのスタメンは鈴木選手・岩波選手であったが、中断から再開後はデン選手がスタメンのファーストチョイスとなった。
ボランチの柴戸選手は中盤で相手からボールを奪い、速やかに攻撃につなげる役割を担いつつある。
COVID-19の影響による中断期間があり過密日程となった2020シーズン、どのようなメンバー選定で戦っていくのか、注目していきたい。
おわりに
2017-2020シーズンの浦和レッズのフォーメーションを振り返ってみた。2012年以降、堀さんが一時的に本格的に4バックにトライしたくらいで、あとはほとんど3バックシステムだったが、2020シーズンから4-4-2を採用している。
ミシャさんもオリヴェイラさんも一瞬だけ4バックを試したことがあったがすぐに3バックに戻している。メインメンバーはずっとミシャさんスタイルでやってきたので、勝利を目指す上での現実的な選択だったと思う。
しかし浦和レッズは2020年以降新たなコンセプトのもと、メンバーも徐々に入れ替わりながら、新しいサッカーにチャレンジしている。僕らは浦和レッズの歴史の転換点にいるかも知れない。この先どのような歴史を作るのか、しっかりとサポートしながら見ていきたいと思う。